パントレ開発部

【2025年版】カメラエンジニアが選ぶ!旅行向けカメラ

 カメラエンジニアといっても、あくまでカメラ開発側の知識が多少あるだけで、カメラユーザー(写真家など)と少々異なる立場という点ご理解ください。なお、この記事は PR 記事ではなく、独断と偏見に基づいた個人の私見です。

はじめに

 「旅行の記録を綺麗な写真に残したい。」多くの旅行者が感じることではありますが、複数のカメラメーカーからたくさんの機種が販売されており、なかなかカメラ選びは難しいと思います。
 また昨今はスマートフォンカメラの発展も著しく、スマホのみで旅行の様々な記録を完結させてしまう方も多いと思います。
 そんな中で、あえて旅行にカメラを持ち歩くとしたらどういった機種が良いか、カメラエンジニアの私が考えてみた内容をまとめます。

 結論から言うと、レンズ交換式カメラ(ミラーレスカメラ)の APS-C 機が適しているのかなと思います。2025 年現在における具体的な機種は以下の通りです。

  • Canon:R50(111,100 円)、R10(132,000 円、R50 より少し高機能版)
  • Nikon:Z50II(145,200 円)、Zfc(129,000 円、Z50 のデザイン変更)
  • Sony:α6700(229,900 円)、α6400(139,000 円、動被写体に少し弱い)

 フルサイズ機(上位機種)に比べると値段は抑えられているとはいえ、それでもやっぱりそれなりの値段はします。「ちょっと予算と合わないな…」と感じられた方はそっとこのページを閉じていただき、以下に何故レンズ交換式カメラでかつ APS-C 機を勧めるのかを説明します。
 

レンズ交換式を勧める理由

 以下、レンズ交換式カメラを勧める理由について説明します。

レンズ交換式カメラとは

 レンズ交換式カメラとは、古くはレンジファインダーカメラ、一眼レフカメラ、最近だとミラーレスカメラのように、カメラ本体(ボディ)にレンズをつけ外しできるカメラを指します。対義語として、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)に代表されるレンズ一体型カメラがあります。

 レンズ交換式カメラの利点を説明するため、あえてレンズ一体型カメラ(コンデジ)の特徴を説明します。レンズ一体型カメラ(コンデジ)では複数の倍率に対応するため、基本的にはズームレンズと呼ばれる、複数のレンズを組み合わせて合成焦点距離(ズーム倍率)を可変にした光学系が採用されています。ズームするとレンズがウィーンと伸びていくあれです。このズームレンズ、どの倍率(焦点距離)でも一定の性能を確保する必要があるため、逆に言うとそれが光学設計上の縛りになってしまいます。

 このズームレンズと相対する存在が、レンズ交換型カメラで使用される単焦点レンズです。(レンズ交換式カメラでは、ズームレンズを使用することも可能です。)
 

単焦点レンズとは

 単焦点レンズとは、ズームできない代わりに特定の焦点距離(倍率)での光学性能を高めたレンズです。ズームレンズと比べて明るいレンズ(F値の大きなレンズ)を設計できるようになるため、ズームレンズよりも背景をぼかした、レンズ交換式カメラらしい表現が可能になってきます。
 レンズ本体を大きくすればある程度明るいズームレンズ(例えば俗に大三元と呼ばれるレンズ)も作ることは可能なのですが、ボケ味の美しさだけでなくヌケ感なども単焦点レンズのほうが優れているかなと感じます(また旅行で大三元などを持ち歩くのはしんどいです)。

 旅先で絶景を綺麗に残すという目的を考えると、この単焦点レンズを少なくとも 1 本持ち歩いていると、ここぞというときに重宝します(レンズ交換の手間はありますが)。

旅行に持っていくレンズ

 表現力に優れた単焦点レンズを使用できるという理由により、私は旅行にレンズ交換式カメラを持っていくことをおすすめしています。ただし荷物が増えてしまうという欠点もあるので、旅行に持っていくレンズは 2~3 本に絞ることになるかなと思います。より具体的にはズームレンズ 1 本、単焦点レンズ 1 ~ 2 本ぐらいかなと思います。

  • ズームレンズ:いわゆる便利ズームと呼ばれる、焦点距離 18 mm – 140 mm ぐらいのレンズはマストかなと思います。個人的にはキットレンズでも全然問題ないんじゃないかなと思っています。 300 mm (望遠側)までカバーしたレンズもありますが、旅行先で動物園やサファリへ行く場合を除いて、そこまでは必要ないんじゃないかと思います。
     
  • 単焦点レンズ:使いやすい 35 mm や 50 mm の単焦点で特に不便を感じたことはあまりないです。これも、いわゆる撒き餌レンズ(性能に対して価格がかなり安いレンズ)で問題ないと思います。仮にもう 1 本持って行けるなら超広角側になると思いますが、便利ズーム+標準単焦点だけでも十分旅行中の写真撮影は楽しいです。

 旅行だとどうしても荷物を削らないといけなくなるので、大きなレンズは邪魔になってきます。海外旅行だと盗難されるリスクも高くなるので、個人的にはそこそこのクラスのレンズで問題ないと感じています(それでもコンデジやスマホよりも表現の幅は広がります)。
 

APS-C 機を勧める理由

 以上おもにレンズの議論をしてきましたが、以下ではカメラ本体に焦点をあてて、APS-C 機を勧める理由について説明します。

APS-C とは

 APS-C (エーピーエスシー)とは、デジタルカメラのセンササイズを示すカメラ用語の一つです。デジタルカメラの内部には、フィルムカメラにおけるフィルムの役割を果たすセンサが搭載されています。一昔前だと CCD (シーシーディ)と呼ばれるセンサが使われていましたが、CCD よりも高画質に進化した CMOS (シーモス)と呼ばれるセンサが使われています。

 レンズ交換式カメラにおける CMOS センサのサイズには、ざっくり以下の四種類があります。以下の表より、APS-C 機はレンズ交換式カメラの中でも、真ん中ぐらいのセンササイズになっていることが分かります。

名称センササイズ
フルサイズ36 mm×24 mm
APS-C23.6 mm × 15.8 mm
マイクロフォーサーズ17.3 mm×13 mm
1インチ(1.0 型)13.2 mm × 8.8 mm
▲ レンズ交換式カメラのセンササイズ

APS-C のメリット・デメリット

 センササイズと性能には以下のトレードオフの関係があります。

  • 重量/大きさ:センササイズが大きい方がカメラ・レンズ本体も大きくなる傾向がある。またレンズが重くなると、三脚などの装備も重くなる傾向がある。
  • ノイズ/ダイナミックレンジ:センサの種類にもよるが、同じ画素数なら基本的にセンササイズが大きい方が有利。より多くの光を取り込める。
  • ボケ味:同じ画角だと、センササイズが大きい方がよりボケやすい(表現力が高い)。

 センササイズが大きくなると、それに比例してカメラ装備も大きく、重くなりますが、画質や表現力は高まります。それなのでフルサイズと比較すると、APS-C は画質や表現力で劣り、その代わりに持ち運びやすくなります。

 画質という観点から、プロは基本的にフルサイズを使用しています。そのため、フルサイズカメラはプロ・ハイアマ向けになっている機種が多く、レンズも含めて値段が高くなっています。

 逆にマイクロフォーサーズや 1 インチは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、最近はカメラメーカーが低価格帯から撤退する傾向があり、マイクロフォーサーズや 1 インチはそもそもの選択肢が減っているのが現状です。またマウント(カメラ本体とレンズを取り付ける部分)から異なっており、APS-C やフルサイズと互換性がない場合が大部分です。(Nikon 1 みたいな 1 インチのミラーレスカメラも昔は存在していたのですが、スマホの台頭によるものか、立ち位置が中途半端だったのか、開発中止となってしまいました。)

 購入するレンズにもよるのですが、上級のフルサイズ機との互換性も残しつつ、比較的持ち運びやすく価格も抑えた APS-C 機を旅行用カメラとしてここではおすすめしています。
 

メーカー別おすすめカメラ

 APS-C 機のミラーレスカメラについて、メーカー別に具体的な機種を挙げます。なおミラーレスカメラに限定しているのは、カメラメーカーがレンズ交換式カメラで開発を続けているのが基本的にミラーレスカメラのためだからです。

Canon:R50

 Canon のミラーレスカメラエントリー機です。RF マウント(フルサイズミラーレスと互換性がある)でも、もう少しお手頃なカメラに R100 があるのですが少し機能を削りすぎている感があるので(私見)こちらを選びました。

項目内容
価格111,100 円
画素数2420 万画素
重量375 g
マウントRFマウント(フルサイズと同じ)
シャッター電子先幕/電子シャッター
▲ Canon R50 のスペック

Nikon:Z50II

 Nikon のミラーレスカメラエントリー機です。Z50 の後継機なので、Z50 だともう少し価格を抑えることができます。メカシャッター(両幕)も搭載。

項目内容
価格145,200 円
画素数2088 万画素
重量550 g
マウントZマウント(フルサイズと同じ)
シャッターメカ/電子先幕/電子シャッター
▲ Nikon Z50II のスペック

Sony:α6700

 Sony のミラーレスカメラエントリー機です。同じ α6000 番台でも、例えば α6400 ではメカシャッターを搭載していなかったりします(動被写体が歪む場合がある)。

項目内容
価格229,900 円
画素数2700 万画素
重量493 g
マウントEマウント(フルサイズと同じ)
シャッターメカ/電子シャッター
▲ Sony α6700 のスペック

 よく判断基準として画素数が挙げられますが、正直ミラーレスカメラにおいて、2000 万画素あれば 4K 画質があり十分です。最近の iPhone も 4800 万画素を謳ってますが、あれは iPhone がズームレンズを搭載しておらず、光学ズームの代わりにセンサの画素数でズームをカバーしているためです。基本的に光学ズームを使用するミラーレスカメラは 2000 万画素あれば十分です。

 また、上記シャッターに言及していますが、旅先で動被写体を対象とする場合、電子シャッターだと CMOS センサの構造上、被写体が歪むことがあります。メカシャッターだとこれを改善できますが、シャッタースピードの限界が 1/4000 秒ぐらいになってしまいます。晴天の明るい被写体をぼかして撮りたかったら、これ以上のシャッタースピードが要求されることも多いです。なお電子先幕シャッターとは、電子シャッターとメカシャッターの中間みたいなシャッターです。

 最後はメーカーのイメージや画作り(画像処理)の違い、カメラ本体のデザインなども判断材料にして良いと思います。レンズのほうがお金がかかる場合もあるので、そちらも確認しておいた方が良いでしょう。
 

スマホとコンデジの使い分け

 以上 APS-C 機のミラーレスカメラに言及してきましたが、少しスマートフォンとコンパクトデジタルカメラにも言及しておきます。

 スマホのカメラは進化し続けていますが、Apple や Google などの IT 企業がスマートフォンを販売している場合も多く、これらの企業は画像処理を得意としています。複数の明るさの画像を合成し明所暗所どちらもバランスよく現像する HDR 合成や、AI との連携なども最近は当然のように行えるようになり、カメラメーカーと異なる視点で進化を続けているように感じます。
 そんなスマホも、昨今は可変絞りの導入やペリスコープ光学系などによって、カメラ自体も徐々にコンデジと遜色ない性能を出せるようになってきました。多画素化・センサ自体の大型化も進む傾向にあり、普段使いのカメラとしてはスマホで十分に思えます。

 しかし前述のように基本的に CMOS センサは動被写体が歪む問題を抱えており、フルサイズならともかく、スマホのセンササイズだと電子シャッターでこの問題を回避することは困難です。またスマホはサイズの制約からメカシャッターの実装が難しく、いまだ動被写体に対してはコンデジが有利な状況は続いています。
 またズーム倍率もスマホはサイズ制約から限界があり、こちらもコンデジが依然として優れているポイントかなと思います。

 旅行先ではスマホ+ミラーレスカメラをお勧めしてきましたが、比較的大きなカメラを持ち運べない場合、うまくシーンに応じてスマホとコンデジを使い分けるのも手かもしれません。
 

さいごに

 以上、カメラエンジニアが考える旅行向けカメラでした。撮影の手軽さをとるか、画質をとるか、持ち運びやすさをとるか、など様々な要素によって人により最適解は異なるかと思いますが、皆様のカメラ選びの一助となれば幸いです。

 最後に一言:カメラにどっぷりのめりこみたいなら、最初からフルサイズもありだと思います!
 

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