【ネパール/カトマンズ】壮年の数学者との問答
壮年の数学者との出会い
ゲストハウスの同室には 40 半ば程の方が泊まっていた。話し始めたきっかけは確か「これは蛇を使った料理なんだけど、食べてみるかい?」と聞かれたことだったと思う。
その方はサイエンティスト、特に数学を専門にしているそうなのだが、今はインドのデリーからずっと自転車旅を続けているらしい。

ウクライナ出身で、インドなど色々な国に滞在した経験があり、このカトマンズには 3 年間住んだことがあると言っていた。
「僕も夕方まで時間が有るから、お昼を食べて、カトマンズの街中を案内するよ。」
少し迷ったけれど、僕は折角の提案に応じることにした。
カトマンズの街中を歩く
近くでネパール料理「モモ」を食べたのち、ダルバール広場やパタン旧王宮広場など、カトマンズの街中をひたすら歩いて回った。

いろいろ話していて、答えに窮した質問が二つあった。
一つ目の質問は、「日本とは何か」ということ。芥川龍之介や大江健三郎など日本文学に興味があって、東京を訪ねたいと言っていた。「日本に行くつもりだから聞きたいんだけど」彼はつづけた「君は何をもって自分を日本人とするのかな?」

取り敢えず「言葉」と答えた。「それから?」と聞かれたので、『恥』の考え方だとか、婉曲表現だとかを、カタコトの英語で伝えようとした。すると「それは皆一緒だよ」と言われた。
確かに、よく「インド人は嘘をつく」等と言うけれど、別に日本人でも保身の為の嘘をつくことは往々にしてあるし、僕も嘘をついた事が無いとは言えない。程度に差はあれど、「○○人は××」と言うとき、大抵それは○○人に限らないような気がする。
少なくとも新型肺炎に対する反応は、ここ数週間見てきた限り何処も同じに思えた。

二つ目の質問は「旅の目的は何か」ということ。 「インドに行くつもりなら色々と紹介してあげるんだけど、そもそもやりたい事は何なのかな?」
僕の中にもやりたい事はある気がするけれど、取り敢えず時間を置きたくて、今は何となくネパールにいる。彼は「そんなに難しい事じゃないと思うんだ」と続けた。

二つの質問に対して、僕はいずれも「分からない」と答えた。
夕方少しお茶をした後、感謝を告げて彼とは別れた。